令和8年3月策定。計画本体と、国庫補助金の応募様式・個別事業評価調書・住民基本台帳を突き合わせ、路線バスと公共ライドシェアに投じられている公費を1乗車あたりに換算した。
調査基準日 2026年8月23日。金額は特記なき限り千円。輸送人員は推計値(算出方法と検証はⅠ章)。
計画から読み取れるのは、①補助総額は微増でも分母が痩せ、1乗車あたりの公費は10年で倍増した、②その負担は系統間で約15倍の開きがあり、転換検討対象の系統に集中している、③公共ライドシェア2地区は単価が下がっており、路線バスと傾きが逆を向いている、④75歳以上の利用は半減したが同年齢層の人口は横ばいで、人口減では説明できない、⑤実証事業の想定単価は現行の路線バスを上回っており、「デマンドにすれば安くなる」とは現時点の数字からは言えない、の5点です。
本ページは公開資料のみを用いたIKILABの独立分析であり、壱岐市の見解ではありません。計画に数値記載のない項目は仮定を置いた推計です。仮定と誤差の向きは各章に明記しました。
計算そのものは単純だが、分母になる輸送人員が計画に載っていない。この推計の妥当性が、以下すべての前提になる。
| 項目 | 内容 | 出典 |
|---|---|---|
| 計算式 | 1乗車あたり公費 = 市補助金 ÷ 輸送人員 | ― |
| 分子(市補助金) | 地方バス路線維持費補助金。2024年度実績 85,742千円。財源は全額が市の一般財源(国庫支出金・県支出金はゼロ)。75歳以上運賃割引と通学定期助成を含む | 個別事業評価調書(令和6年度) |
| 分母(輸送人員) | 計画に年次系列の数値記載がなく、端点とグラフのみ。「75歳以上利用者数」と「全体シェア率」から各年を逆算した | 計画 p.18 |
| 推計の検証① | 逆算値の2015年度は 303,519人。計画本文の「2015年 304,830人」とほぼ一致する | 計画 p.17 |
| 推計の検証② | 市の「バス乗降客数」実績は R2年度175千人・R5年度200千人・R6年度182千人。逆算値(175,327/199,342/183,046人)とほぼ一致 | 個別事業評価調書(令和2〜6年度) |
| 残る不一致 | 計画本文の「2024年度 総輸送人員 151,800人」だけが、上記いずれとも噛み合わない。要確認 Ⅵ章 2 を参照 | 計画 p.17 |
| 計画の版 | 市が「策定しました」として掲載しているPDF(111ページ、PDF作成日2026年3月25日)を取得し、本ページの数値とⅥ章の指摘が、いずれもこのPDF上に現存することを照合しました(2026年8月23日。SHA-256 a4823adf…)。突合したのは系統別表(p.20-21)・75歳以上の系列(p.18)・空路(p.26)・評価指標(p.42-43)です。なお、このPDFには「(案)」付きの見出しが表示されたまま残っています(Ⅵ章 7)照合済 | 壱岐市地域公共交通計画の策定について(掲載ページ)/同 計画本文PDF |
| 75歳以上人口 | 住民基本台帳(各年3月31日現在)から、75〜79・80〜84・85〜89・90〜94・95〜99・100歳以上を合算。年度はその年度初日にあたる3月31日時点と対応させた | 統計データ集 3-3 |
補助総額だけを見ていると、この10年は「やや増えた」に見える。分母を入れると景色が変わる。
路線バスは上昇、公共ライドシェア2地区は低下。単価の水準ではなく、傾きの向きが逆であることが、この2つのモードの違いです。
路線バス=市補助金÷輸送人員(推計)。公共ライドシェア=(費用−運賃収入)÷利用者数、初山・箱崎の合計。なお本ページでは、計画で「乗合タクシー」と呼ばれている初山・箱崎の運行を、制度名(道路運送法78条2号・交通空白地有償運送=公共ライドシェア)で表記しています。理由はⅥ章 6 を参照。
2本の線の間隔は、2015年度の18,556千円から2024年度の39,068千円へ2.1倍。なお個別事業評価調書によれば地方バス路線維持費補助金の財源は全額が市の一般財源ですが、計画p.39は系統1・12に国庫補助(地域間幹線系統補助)、系統3に県単補助が付くと記載しています。これらは市の予算を通らず県の協議会経由で事業者に直接交付されるため、この間隔のなかに含まれています。
| 年度 | 経常収益 | 経常費用 | 経常赤字 | 市補助金 | 差 | 輸送人員(推計) | 1乗車あたり公費 |
|---|
金額は千円。2022年度と2023年度は計画上まったく同じ数値が並んでおり、実績と異なる可能性があります(Ⅵ章 1)。
計画の系統別表(p.20–21)には系統別の輸送人員がなく、市補助金も系統に配分されていない。経常収入を平均運賃206.0円(総経常収入37,714千円÷総輸送人員183,046人)で割って人員を推定し、系統別の経常赤字を割ったうえで、市の補助カバー率68.7%を掛けた。
縦線=全系統平均468円。橙=計画p.36が「日中のみ運行」として転換検討の対象に挙げた11系統。なお転換検討対象はこのほかに、高校生時間帯だが需要が極端に少ない7系統(5・8・9・14・16・17・27)を含む計18系統で、実施事業1-2の対象系統リスト(15系統)とも範囲が一致しません。
A区分の幹線(系統1・3・12)が226〜316円、最も効率の高い系統26が49円なのに対し、D区分は3,963〜4,278円。約15倍の開きがあります。
この推計は「平均運賃が全系統で同じ」という仮定に立っています。実際の平均運賃は、高校生定期と75歳以上100円施策の比率によって系統ごとに異なります。誤差の向きは一定で、学生定期比率の高い系統(26・24・3・15)は1乗車あたりが過大に、空港線(系統23)など正規運賃客中心の系統は過小に出ます。転換検討対象のD区分・日中C区分は一般客中心で、この仮定が比較的当てはまります。
| 系統 | 評価 | 運行区間 | 経常収入 | 経常費用 | 経常損益 | 収支率 | 推定人員 | 市負担/乗車 |
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金額は千円。橙字=日中のみ運行の転換検討11系統。
| 地区 | 年度 | 利用者数 | 費用 | 運賃収入 | 公費 | 1乗車あたり公費 |
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金額は千円。公費=費用−運賃収入。箱崎は令和5年度の運行開始のためR5からの記載。
75歳以上のバス利用は10年で48,563人から23,796人へ半減した。一方で同年齢層の人口は5,506人から5,467人(▲0.7%)とほぼ横ばい。総人口が▲14.9%減るなかで75歳以上だけは人数が維持され、人口に占める比率はむしろ19.5%から22.8%へ上がっている。
75歳以上の年間バス利用者数(延べ)÷ 75歳以上人口。1回100円で乗れる施策があってなお、ちょうど半分になっています。
| 年度 | 75歳以上 バス利用(延べ) | 75歳以上人口 | 1人あたり年間利用回数 | 総人口 | 75歳以上比率 |
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島外への移動を見ると、空路(長崎〜壱岐)は2024年度にほぼ完全に回復しています。一方で島内の路線バスだけが2019年度の水準に戻っていません。同じ島民の同じ時期の行動でありながら差が出ている以上、バス固有の要因を探す必要があります。
2019年度を100とした指数。空路の実数は計画p.26より。
| 年齢階層 | 2015年度 | 2020年度 | 2024年度 | 2015→2024 |
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85歳以上の比率は35.5%から39.0%へ3.5ポイント上がっています。ただし仮に85歳以上の利用頻度が75〜84歳の半分だとしても、この構成変化が全体の1人あたり回数を下げる効果は2%程度で、半減の説明には足りません。
この数字を、住民が外出を「諦めた」結果だと読みたくなります。しかしそう結論づける前に、順序があります。先に別の要因で説明できる分を差し引かないと、本来は供給の減少や通院回数そのものの減少だったものまで「諦め」に計上されます。
| # | 仮説 | 内容 | 検証に必要なデータ | 住民調査 |
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「住民調査」=抑制トリップ調査で拾えるかどうか。○が付くのは4つだけで、残りは住民に聞いても出てきません。
検証の順序が結論を左右します。①②で前提を確定し、⑤⑥を行政データで概算したうえで、残差を③⑦⑧として住民調査で埋める——この順であれば「諦め」の大きさを過大に見積もらずに済みます。逆に住民アンケートで先に「諦め」を聞いてしまうと、実際には供給の減少や通院回数の減少だったものまで、そこに計上されます。
2026年10月から3か月、郷ノ浦の一部と勝本・芦辺・石田の全域で、公共ライドシェア(事業者協力型)による区域デマンド交通の実証運行が予定されている。運賃1回500円、月〜土の8時〜13時。
| 比較対象 | 1乗車あたり公費 | 内訳 |
|---|---|---|
| 転換検討11系統(現行の路線バス) | 1,841円 | 経常収入3,460千円・経常費用48,468千円(収支率7.1%)。赤字45,008千円 ÷ 推定16,793人 × 補助カバー率68.7% |
| 実証事業(運行経費ベース) | 3,058円 | 運行経費6,490千円 − 運賃収入912千円 ÷ 見込利用者1,824人 |
| 実証事業(全体費用ベース) | 10,039円 | 事業費19,222千円 − 運賃収入912千円 ÷ 同。システム構築費が事業費の約半分を占める |
この表は2つのことを同時に示しています。ひとつは現行のままでも1乗車1,841円かかっているという点。もうひとつは実証の運行経費ベース3,058円が現行を上回っているという事実で、「デマンド交通にすれば安くなる」とは現時点の数字からは言えません。
全体費用ベースの10,039円は、システム構築費と3か月・小規模という条件を含むため定常運行の単価ではありませんが、注目されやすい数字です。損益分岐は利用者数で決まり、運行経費ベースで現行水準(1,841円)に並ぶには実証エリアで年約29,000人の利用が必要な計算になります。単年の単価を比べるより、この損益分岐と、路線バス(上昇)・公共ライドシェア(低下)の傾きの違いで見るほうが実態に近いと考えます。
計画の数値を議論に用いる前に、確認しておきたい点。いずれも公開資料を突き合わせる過程で気づいたもので、指摘というより照会です。このうち1・2・5については、市の個別事業評価調書と突き合わせて確認しています。
a4823adf…)には、p.36「再編イメージ(案)」・p.43「評価指標と達成目標(案)」が表示されたまま残っています。あわせて表紙には「素 案」の文字がテキストとしては存在するものの、白で描画されるため画面には現れません(ページを画像化して画素を数え、表示されないことを確認しました。文字列検索やコピーでは出てきます)。素案の版を下敷きに作られたことがうかがえます。2026年8月23日に取得して確認しました。上記1〜6の指摘は、いずれもこのPDF上に現存します。パブリックコメントや地域公共交通会議を経た修正が反映された版が別にあるのか、この版をもって確定としているのかで、1〜6の扱いが変わります。差し替えのご予定を含めて確認をお願いしたい点です。