第7期=平成30〜令和2年度/第8期=令和3〜5年度。計画書の見込値と、後継計画・決算・厚労省統計に表れた実績を突き合わせて検証。
調査基準日 2026年8月10日。金額は特記なき限り千円。認定者数は第1号被保険者・年度末。
両期を通じて見えるのは、①認定者数の見通しが両期とも外れた(第7期は減ると見て増え、第8期は増えると見て減った)、②総額の給付費は±5%に収まるがサービス別の乖離は大きい、③離島ゆえに立ち上がらないサービスが固定化している、④財政は保守的に設計され結果的に基金が積み上がり第9期の据置きにつながった、⑤体制整備系の目標は達成できても住民への浸透系の目標は計画倒れになりやすい、の5点です。
両期とも日常生活圏域は市内全域1圏域。ニーズ調査と将来推計を土台にしている点は共通だが、推計手法と長期の視野が異なる。
| 前提 | 第7期(平成30年3月策定) | 第8期(令和3年3月策定) |
|---|---|---|
| 基準時点の人口 | 平成29年度末 26,857人/高齢化率 36.3% | 令和元年度末 26,070人/高齢化率 37.4% 平成27年3月末から5年で2,116人減 |
| 推計手法 | コーホート要因法 | コーホート変化率法 |
| 長期の視野 | 2025年まで(2040年推計なし) 2025年=総人口24,039人・高齢化率38.8% | 2025年+2040年 2025年=23,792人・39.5%/2040年=17,140人・42.2% |
| 認定者の見通し (第1号) | 減少を見込む H30 2,149人 → R2 2,069人 | 増加を見込む R3 2,213人 → R5 2,243人/認定率 22.8%→23.4% |
| ニーズ調査 | 介護予防・日常生活圏域ニーズ調査(H29.8、郵送1,500件/回収797件・53.0%)+在宅介護実態調査(H28.12〜H29.3、347件・100%) | 同ニーズ調査(R2.8〜9、郵送1,498件/回収762件・50.9%)+在宅介護実態調査(R元.10〜R2.3、386件・100%) |
| 調査で見えた課題 | 近隣への相談は15%前後にとどまる/地域活動への参加意向47.9%に対し世話役意向27.5%/介護しながら就労33.5% | 認知症の相談窓口を知っている 27.6%/地域包括ケアシステムを「言葉も内容も知っている」22.2%/ほとんど外出しない16.5% |
| コロナの織り込み | ― | 計画本文に「新型コロナ」の語は一度も登場しない。議会説明で「コロナと令和2年7月豪雨を受け、平時からの災害・感染症対策を追加」と説明され、施策として新設された。給付費推計への織り込みは確認できず |
| 積み残しの課題 | 養護老人ホーム(定員110)の入所待機 208人(H28年度末)/認知症対策・在宅医療連携・介護離職 | 同待機 223人(R元年度末、悪化)/介護人材不足/二次離島 三島地区(高齢化率46.9%)への事業者参入困難 |
| 保険料算定の諸元 | 総給付費見込 9,983百万円/第1号負担割合 23%/基金取崩し 60百万円/予定収納率 98.55%/補正被保険者数 23,577人 | 事業費見込 10,804百万円/23%/基金取崩し 23百万円(残高全額)/予定収納率 99.07%/補正被保険者数 24,772人 |
| 保険料基準額 | 月6,145円(年73,700円)・9段階 第6期5,262円から +883円 / +16.8% | 月6,490円(年77,800円)・9段階 第7期から +345円 / +5.6% |
第7期は「基盤を作る」計画、第8期は「作った基盤を回す」計画。議会でも第8期は「これまでの事業をさらに充実させることを柱に、サービス整備を含む大きな見直しは行っていない」と明言されている。
基本目標4本(①地域のつながり ②生きがい ③やさしさ ④安心感)。第6期の理念を踏襲。
基本目標4本の骨格は第7期を継承。理念に「その人らしく」「自立した日常生活」「地域で支え合い」を追加。第9期もこの体系をそのまま踏襲。
第7期は「減少」を見込んだが実績は横ばい〜微増。第8期は「増加・認定率23.4%へ」を見込んだが実績は22%台で横ばい〜微減。人口推計はおおむね当たっているのに、認定率の見通しが両方向にぶれている。
第1号被保険者の要支援・要介護認定者数(各年度末)。実績は第9期計画掲載値および e-Stat 介護保険事業状況報告年報。※第9期計画のグラフは暦年(各年3月末)表記のため、第7期計画の年度末実績と突合して年度に読み替えている。
| 年度末 | H29 | H30 | R元 | R2 | R3 | R4 | R5 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 第1号被保険者数 | 9,767 | 9,793 | 9,800 | 9,817 | 9,768 | 9,651 | 9,554 |
| 認定者数(実績) | 2,162 | 2,213 | 2,188 | 2,189 | 2,196 | 2,163 | 2,179 |
| 認定率(実績) | 22.1% | 22.6% | 22.3% | 22.3% | 22.5% | 22.4% | 22.8% |
| 計画の推計 | ― | 2,149 | 2,119 | 2,069 | 2,213 | 2,231 | 2,243 |
| 対計画比 | ― | 103.0% | 103.3% | 105.8% | 99.2% | 97.0% | 97.1% |
認定率は県内でも高位。令和4年時点の性・年齢調整済み認定率は軽度13.4%(長崎県12.8%)、重度6.6%(同6.2%)。令和5年度末の実認定率は壱岐市22.8%に対し長崎県19.9%・全国19.4%。
実績が計画をどれだけ上回った/下回ったかの差額。第7期は3年連続で計画超過、第8期はコロナの利用控えで一転して計画割れという、はっきり分かれた軌跡になっている。
介護給付費+介護予防給付費の「実績 − 計画」(百万円)。第7期分は第8期計画掲載の実績、第8期分は第9期計画掲載の実績。令和5年度のサービス別実績は第9期計画に未掲載のため対象外。絶対額は下表を参照。
| 年度 | 計画(介護+予防) | 実績 | 対計画比 | 特徴的な乖離 |
|---|---|---|---|---|
| H30(第7期1年目) | 2,800,852 | 2,850,077 | 101.8% | 訪問リハ 221.9%/訪問介護 119.5%/地域密着型通所介護 139.4% ⇔ 介護療養型 32.2%、認知症デイ 0% |
| R元(第7期2年目) | 2,800,239 | 2,935,686 | 104.8% | 地域密着型通所介護 297.8%/訪問リハ 259.0% ⇔ 通所介護 83.0%、認知症デイ 0% |
| R2(第7期3年目) | 2,839,587 | 2,958,599 | 104.2% | 短期入所生活 204.3%/地域密着型通所介護 244.1% ⇔ 通所介護 72.8%(コロナで一部休止)、GH 69.4%(年度途中開設) |
| R3(第8期1年目) | 3,006,919 | 2,983,352 | 99.2% | 特定福祉用具購入 144.1%/居宅介護支援 113.5% ⇔ 住宅改修 74.2%、特定施設 80.5% |
| R4(第8期2年目) | 3,029,926 | 2,888,268 | 95.3% | 訪問リハ 123.6% ⇔ 住宅改修 64.9%、特定施設 75.7%、短期入所療養 79.7%、地域密着型通所介護 80.6% |
| R5(第8期3年目) | 3,067,113 | ― | ― | 第9期計画に実績欄なし。決算ベースでは前年度比 +1億8,555万円(5類移行による利用回復) |
決算ベースの介護給付費(2款)の推移は次のとおり。第8期の落ち込みと反動増がはっきり出る。
| 年度 | H30 | R元 | R2 | R3 | R4 | R5 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 介護給付費(百万円) | 3,102 | 3,208 | 3,220 | 3,247 | 3,145 | 3,330 |
| 前年度差 | +46 | +106 | +12 | +27 | ▲102 | +186 |
市議会での公式説明 ── 令和4年度「新型コロナにおける2回にわたる感染の大きな波により訪問通所サービス及びショートステイの利用控えや受入れ自粛が大きく影響」/令和5年度「感染症法上の5類に移行して行動制限等がなくなったことから利用者が増え増額」。
| 計画された整備 | 期 | 結果 | 判定 |
|---|---|---|---|
| グループホーム 2ユニット18人 | 第7期 | 平成30年に公募、令和2年6月に開設。給付費は R2 69.4%(年度途中開設)だが R3 108.4%・R4 105.9%と計画超え | 実現 |
| 認知症対応型通所介護 定員12名 (H30年度開始予定) | 第7期 | H30〜R4の5年間すべて給付費 0円。第8期・第9期の見込量も0で、事業自体が立ち上がっていない | 未実現 |
| 短期入所生活介護 14床増 | 第7期 | R元 122.1%、R2 204.3%と給付費が大きく伸び、増床は反映されたとみられる(※実績からの推定) | 実現 |
| 通所介護 定員12名増 | 第7期 | 給付費は3年とも計画割れ(93.6%→83.0%→72.8%)。定員増の効果は給付費に表れていない | 効果不明 |
| 介護医療院(見込量0で計上) | 第7期 | 計画0円に対し H30 3,162/R元 10,924/R2 15,542千円の実績。裏側で介護療養型医療施設が計画比16〜32%に急減。計画に織り込んでいない転換が起きた | 計画外 |
| 新規整備なし(既存事業の充実) | 第8期 | 方針どおり新規整備なし | 計画どおり |
| 壱岐市立老人ホームの 一般型特定施設への移行(R5.4) | 第8期 | 実現の有無を公表資料から確認できず。特定施設入居者生活介護の給付費は R3 80.5%・R4 75.7%と低調 | 確認できず |
給付費実績が一貫して0円=市内に事業所がないサービス:認知症対応型通所介護、小規模多機能型居宅介護、看護小規模多機能型居宅介護、地域密着型介護老人福祉施設、地域密着型特定施設。第9期でようやく令和8年度に小規模多機能型居宅介護を公募整備し令和9年度サービス開始を掲げた。
第8期計画が令和5年度に置いた目標値と、第9期計画に載った令和5年度実績見込の比較。
縦線=目標値(100%)。年12枚→6枚に縮小した入湯優待券など、制度自体を変更した指標は比較対象から除外。
傾向は明快で、認知症カフェの設置・介護予防教室の開催・ケアマネ支援といった「行政が直接やること」は目標を超え、サポーター養成・認知機能チェック・医療連携の連絡票といった「市民や関係機関を巻き込むこと」は大幅未達。実際、ニーズ調査の「認知症の相談窓口を知っている」は第8期策定時の27.6%から25.8%へ低下しています(地域包括ケアシステムの認知度は22.2%→27.8%と改善)。
| 項目 | 第7期 | 第8期 | 第9期(参考) |
|---|---|---|---|
| 保険料基準額(月) | 6,145円 (+16.8%) | 6,490円 (+5.6%) | 6,490円 据置き |
| 所得段階 | 9段階 | 9段階 | 13段階に多段階化。65歳以上の約半数が引下げ |
| 予定収納率 | 98.55% | 99.07% | 99.05% |
| 実際の収納率(現年度) | 98.91 → 99.07 → 99.11% | 99.19 → 99.43 → 99.68% | ― |
| 介護給付費準備基金 | 取崩し 60百万円を前提 期末残高 23百万円 | 残高全額23百万円を取崩してスタート → R4に40百万円、R5に10百万円を積立 | 取崩し 60百万円を前提にできるまで回復 |
第8期は基金残高を使い切ってスタートしたにもかかわらず、給付費の計画割れ(コロナ)+想定を上回る収納率により期中に基金が積み上がりました。その結果、第9期は6,000万円を取り崩せるだけの残高が確保でき、保険料を第8期と同額に据え置くことができています。県内19保険者中で壱岐市の第9期保険料は5番目に高い(県平均6,222円・全国平均6,225円)。
第9期は令和8年度末で満了。令和8年度中の改定作業で扱うことになる論点。